うさぎの耳はちぎれない

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しかし、担任の萩野の姿はない。いつもバカみたいに早く来るのに。 「ハゲ野休みかな?」 「さぁな。つか、席に座れ」 「お前は学級委員長か!?」 「バカっ!!」 裕太は川口を頭が外れんばかりに叩いた。 「だいじょーぶだって。委員長、休みみたいだし」 びくつく裕太を川口は笑う。 つい先日のことだ。委員長の水原に裕太は怪我を負わせたのだった。廊下の曲がり角で行き当たりばったり。男子の裕太は腹に子供がぶつかったほどにしか感じなかったが、女子の中でも小柄な水原は自転車にでもぶつかったように吹っ飛ばされ腰を強く打った。完全な事故だったのに目撃者の女子たちからは一方的に攻められた。 「ちゃんと謝ってよ!」 「背中、あざだらけなんだってよ?サイテー」 「杖無いと歩けないなんてかわいそー」 俺は悪くない。むしろ、感謝してほしい。どこでも委員長ぶる水原を煙たがっていたのはクラスの生徒ほとんどだ。 だが、さすがに少しばかりは気まずくこの頃はなるべくギリギリに来たり用もないのに購買に行ったりして水原と顔を合わせることをなるべく避けている。 休みならば、今日は平穏に過ごせるな。 しかし、早々思い通りには行かない。 「水原が、亡くなった。」 お前も関係あるんだ、と萩野の目が裕太を刺す。萩野はハンカチで手を拭きながら続けた。 「今、事件になっている連続殺人の可能性があるようだ。」 うへっ、一番前の席から川口の声があがるが、周りの人間はいたって静かだ。 いや、俺の席からは見えないだけで、全員恐怖に顔をひきつらせているだろう。 38人の恐怖を引き継いだように萩野も蒼白だった。 「調査があるそうで、警察が出入りするが、みんなは変わらず過ごしてほしい。」 朝の会が終ると教室が爆発した。悲しむ声より連続殺人に興奮して、誰彼構わず捕まえて自分の推理を話したがった。ただ、庭か探偵たちは他の言葉を認めずに自分の思考を吐き出す。
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