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その日の学校は昼休みに警察が来たことと先生たちの様子が少しおかしかったことを除けば変わらない一日だった。
放課後はサッカー部も休みでどちらかといったら過ごしやすい日。
ひとつだけ妙なことと言ったら、帰り道に変な人に会った。
「ここらへんでうさぎを見ませんでしたか?」
突然現れたひょろ長い男。あの制服は近くの高校のもの。
そんなに驚かなくてもよかったのだが、なんせここは夢で襲われた場所。たじろいで逃げ腰になるのは仕方がない。
「あぁっ!すいません。怪しいものではないんですよ」
怪しいやつほどそう言う。
裕太の今にも駆け出しそうな様子に男は慌てた。
「僕は国木田市第三高等学校、二年A組、宇佐見翔吾です」
宇佐見は胸ポケットから生徒手帳を取り出した。本物を見たことがないから判断しょうがない。
「君は…国中?」
「まあ、はい」
「僕も国中ですよ」
にこにこ笑う宇佐見は不快だ。裕太は夢のような不可思議を少なからず期待していた。そして、自分だけが助かることをまた祈っていた。
「それで、うさぎ見ませんでしたか?真っ白いやつなんです。」
「いえ、ここらへんでは見てません」
「そうですか…」
肩を落とす宇佐見。なくして嫌なものなら繋いでおけばいいのに、
「いやがるんですよ。ミミ吉のやつ」
「え?」
「あっ、ミミ吉ってのは名前です、」
そんなことわかってる。俺はさっきの言葉を口に出すしていたか?
「見つけたら、ここに連絡ください。」
メモを切り離し宇佐見はそれを裕太に握らせた。まるで、おじいちゃんが孫に内緒でおこづかいをあげるようだ。
「それじゃあ、お願いします」
変なやつ、宇佐見は年下に惜しみ無く頭を下げる。見つけても、どうせこの紙は破り捨ててやるから、
「君、地下室に気をつけてくださいね」
「は?」
聞き返す間も持たせず、宇佐見は商店街の方へ走り去っていった。
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