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「隆志っ たぁかぁしぃ~っ」
紅いドレスを着て
鏡の前でグルグルしながら
私は 大声で叫んでいた。
別に遊んでいる訳ではない…
6時から 友達の結婚式なのだが
背中のファスナーがどおしても上がらず
苦戦していたのだ。
「お嬢様…何をなさっているのですか?」
「隆志 遅いっ ちょっとファスナーあげてよ」
髪を上げて クルリと背を向けると
いかにも 呆れた様なため息が聞こえてきた。
「ため息 聞こえてるからねっ」
少し 怒りを含ませながら言葉にするけど
「出来ましたよ」と
スルーされた(-_-)
「わぁっ もお5時過ぎてるじゃんっ
帝国ホテルまで 送ってって」
「全く…なぜ もっと余裕をもって支度しないんですか」
「もぉ お説教なら帰って聞くから とりあえず車出してっ」
慌てて部屋を飛び出したが
《愛しの君》に挨拶を忘れた事に気が付き
再び部屋に戻る。
「土方さま 行ってきます❤」
机の上に貼られたポスターに投げキッスをして
玄関まで掛け降りた。
玄関の前には 隆志が既に車の後部座席のドアを開けて待っていた。
「捕まっても構わないから 急いでね。」
《捕まったら 間に合いませんが?》
そんな ツッコミを心の中で呟きながら
隆志は静かにドアを閉めた。
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