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「いい?絶対この部屋から出ちゃだめだよ。鍵もしっかりかけてね」
最後の1人をなんとか部屋に入れる。
すると、また突然あの人が私のすぐ前に現れた。
「全員避難したか?」
「は、はい…あ、ありかとうございます。えっと…」
名前が分からず言葉につまる。 「…ファクト」 「え?」 「名前はファクトだ」
その人…ファクトさんは辺りを見回すと「失礼」と言って…
「…きゃっ!」
私を軽々持ち上げた。しかもお姫様様抱っこ。
「お、降ろして下さい!いきなりきて、いきなりこんなこと…」
抵抗しようと足をばたつかせるけれど、その人は気にした様子がまったくなかった。 「すまない。今は一刻の猶予もないんだ。あいつらが感づく前に行く」
その人は私の言葉を遮るようにそう言い、上に飛んだ。
頭を胸に強く寄せられて目をつぶると、パリーンッ!!と窓が割れた音が近くでした。どうやら天窓まどを突き破ったらしい。
「っ!大丈夫ですか!?」
ぐいっと頭を上げて、その人の顔を見る。
「いきなり上げるな。危ない」
その人の視線を辿っていくと…
「ひぃっ!?」
下は暗闇の中で住宅街の光の輝きがたくさん見えた。つまり飛んでいる、ということになる。しかも猛スピードで。
いつの間にか雪は止んでいて、冷たい風が強く頬に当たる。
「あ、あの…速すぎませんか?」
震える声で聞いてみると
「早くつかなければならないかな。もう少しの辛抱だ」
と、無表情で返された。
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