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“憧れ”─とは。
時に、均衡を破壊する。
「──お願い、またついてきて?」
これは、アイツの常套句になっている。
「─────また?今度は何処だよ。」
部活終了後。
土曜日の一日練習を終え、各務李織[カガミイオリ]は部室の一角にあるロッカールームで着替えながら、うんざりとした態度で友人──御坂成耶[ミサカナルヤ]の方を向く。
この常套句は最早何度目だ、というもの。
断るのも面倒になった今や、どうでもいいという感覚の方が勝ってくる。
御坂は御坂で、断られなかったことでにやり、と笑うと、各務より少し遅れてユニフォームを脱ぎ始めた。
「それがさー、そろそろ夏に入るだろ?今の服だと暑苦しいっていうか。
そんで、明日はたまたま部活ねえし。一日使ってゆっくり選びたいわけ。
そこで邪魔に入られたら嫌だろ?」
「............。」
「あ、ちょうどいいからお前にもなんか買ってやるし、な?」
「..................あっそ。」
はぁぁ、と溜め息をつきつつ、制服のネクタイを閉める。
衣替えがまだなので、ネクタイはまだ外せない。
さっさと荷物も纏めて指定のスポーツバッグを抱える。
「!......あ!ちょ、はやいよっ李織!」
「お前が遅いんだろ、早くしろよ。」
「ひど!俺はマネの娘に絡まれて仕方なく......」
「.........わかったわかった外で待ってるから。」
出入り口に居ては迷惑になるのでとりあえず外に出る。
冬と違い、中も外も同じような温度だ。
それから程無くして、御坂は部室から現れた。
++++
御坂にとって。
俺は、友人であり、そして──────
偽装彼女、だ。
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