Prologue

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 軽く笑みを浮かべながらそう言い、手を差し伸べた女性。  緊張が解け、全身から力が抜けていくのがわかる。  もちろん相手の素性が分からない今、安心するのはまだ早いが、やっと人らしい人と出会えたのが何よりも嬉しかった。  生まれて初めて聞いた生の銃声。辺りに漂う火薬の匂いは、騒然とする不気味さを残している。  「あっ、ありがとうございます」  差し出された手を握りしめる。俺の掌より一回り小さく、温かい。  立ち上がろうとするが足の震えはまだ止まっておらず、足でしっかりと地面の感覚を掴むのに、少しばかり時間がかかった。  女性は外への扉を片手で開けながら   「さっきの銃声に魔物が寄ってくる可能性がある。ひとまず外に出て街へ向かおう」  そう言い銃を再び手にした。  それを追いかけるように外へ出る。   先程までの事が嘘かのように、辺りは静かで、足音だけが聞こえている。  柔らかい宵の風、それに揺れる草花、眩い満月、瞬く星々。  気持ちが落ち着くにつれて、ようやく蛙や虫の鳴き声を認識出来た。 遠くに煌めく街の光。  もしかしたら自分の故郷に帰れるかもしれない。と、本気で思った……。
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