Prologue

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 それはそれは言葉を失った瞬間だった……。    燃え盛るように紅い夕日、地に咲いた数千の刃。   家や車、電柱や人影はない。見慣れた日常は見渡しても見つからない。それに対を成すように、あるのは非日常。  誰もが目を疑うであろう光景が今、視界を埋め尽くし、自分の耳が機能していないのではないかと思える程、辺りは静まり返っていて恐怖すら感じる。  ただ地平線へと続く荒野に、和風洋風の剣が幾千と不規則に、そして不自然で非人為的に刺さっている。  なにより見覚えの無いこの場所に、ぽつんと独りで居ることに、不安で不安で仕方が無い。  そんな心境とは裏腹に、優しく心地の良い風が身体を通り過ぎては空へと消えた。  段々と欠けていく夕陽を見れば見るほど、胸の内側から込み上げる寂しさ。  ……此処は何処?  記憶を何度辿っても、晴れることのない疑問。  憂鬱な気分にさせるように、似たような毎日を繰り返し、アルバイト先から家に向かった所までは思い出せても、それ以降はどうしても思い出せない。  疲労感できっと家で泥のように眠り、夢でも見ているのだろう……。 
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