Prologue

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 早く目が覚めてくれることを願い、頬を思いっきりつねる……  ……痛い。  夢じゃない。そう認識した時には、信じがたい現状に背筋に寒気が走った。  此処は一体何処で、何故此処にいるのか……何一つ分からない。 ただ、まるで別世界だ。 少なくとも日本で見る景色ではない。取り囲むように生えた数え切れない程の剣がそれを物語っている。  もちろん自宅までの帰路にこのような場所は無い。 少しでも記憶に有る物がないか、ひとまず辺りを詮索してみようと思った。    こんな時こそ冷静に。そう自分に言い聞かせては、一歩、また一歩と荒野を彷徨う。  方角などは検討もつかないが、前方数km先に深く茂った森、後方数kmは刃の海と化していて、左右数km先には山が連なっている。  前方の森の方角に、幽(かす)かに見える一軒家。  自分以外の人の存在を僅かながらも感じ、期待と興奮で足取りも軽く、若干小走りで、一軒家へと向かった……
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