58人が本棚に入れています
本棚に追加
一軒家に着いた頃には夕日もとっくに落ち、外は黒一色となっていく。それだけでも虚しさが産まれるには充分だった。
足元を照らす空高く光る月。こんなにも月明りを頼りにするのは、多分初めてだろう。
此処に辿りつく途中、この家の室内の電気が点いたのを見て、人の存在を確信したのと同時に、ぽつんと光るほのかな光を頼りに、此処まで歩いて来れたのだ。
近付くにつれて、この建物の敷地の巨大さが感じられる。2階建てで、2階の窓からこちらを覗く大きなシャンデリア。
きっとこの家に住む方は貴族かお偉い立場の方、あるいは大富豪邸なのだろう。
正面入り口であろう扉の前まで来たものの、ベルもインターホンも見当たらない。
僅かに躊躇うも
「すみませーん」
と何度か叫んだり、ノックをしてみるが、何の反応の無いまま、また静寂に戻るだけだった。
明かりは点いているから誰かしら居るはずだ。こうなったら直接話しを伺おう。
少々の葛藤の末、恐る恐るドアノブを引いてみると、思ったよりも楽に扉が開いた……
最初のコメントを投稿しよう!