主人公は雨男。

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主人公は雨男。

例えば楽しみにしていた学校行事など特別な日に、朝まで雲一つ無く晴れていた筈の天気が、ある特定人が姿を現す事で急に雲行きが怪しくなり、雨が降ってきてしまったという経験をお持ちだろうか? 雨の日は気分が乗らないという人は少なくないだろう。 折角の楽しみに水を差すこうした事象は不快感と相まって人の印象に残りやすく、しばしばこれが続けばこの急に降り出した雨がその特定人の所業に思え、人は何の気なし、何の根拠もなしにその特定人を雨男や雨女と呼んだりすることがある。 こう呼ばれて、心の傷付く人々がいるのか分からないが、その何の気なし、何の根拠もなしの理論になぞるなら、今年で高校2年生になる上山茂樹(カミヤマシゲキ)は雨男である。 誰が上山を雨男と呼称し始めたかは分からないが、彼が訪れる場所、場所では降水確立が30パーセント上昇するらしい。 勿論、学術的根拠が無いのだから、その確率論も根拠があるわけないのだけど、上山の雨男力にはその何の気なし、何の根拠もない理論を信じたくなるような力があるらしい。 兎に角、この上山の雨男力は後々に分かってくるから、今は先月の5月13日の話をしたいと思う。 そう、この日は特別だった。 雨男、上山にとって運命の出会いと言っても過言ではない、1日だったのだ。
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