流れ星の伝説

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オレに用意された初舞台は、大型ショッピングモールのお子様向けショーの前座である、5分だけのステージ。 オレは控え室ならぬ従業員更衣室で、悦に入っていた。 この日のために、腰みなみに作らせた、特注の着ぐるみ。 何人も寄せ付けないアピールを込めた眩いフォルム。程よい三つ葉の散らしっぷり。完璧だ。 油をしっかりと切った特大かき揚げに袖を通すと ステージに躍り上がる。 イケメンのオレにセリフなぞ必要ない。 マッチョがよくやる例のポージングを真顔でキメながら、時折頭の地球儀を回すだけで 平日の昼間だというのに、スマホを構えたJKが群がり オレからこぼれ落ちた三つ葉を大事そうに拾い上げ、本に挟む老人さえいる始末だ。 しかし味気ない。 オレにとってこの5分間は、それこそ児戯でしかあり得ん。 しかしこの味気ないステージこそ オレを確実に、世界の中心へといざなう第一歩なのだ。
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