第一章 始動

2/9
前へ
/37ページ
次へ
7月某日、日本。 今日は最高気温35度を記録し、猛暑日となった。ミーン、ミーンと遠くで鳴いているセミの鳴き声と共に小学生くらいの子供達が目の前を通り過ぎる。 セミの鳴き声に、負けないくらい騒がしい声をあげながら走って行く子供を見て、額の汗を手で拭いながら間藤 真司(マトウ シンジ)は夏の到来を感じていた。 「・・・若いって、いいよなホント。」 ふとそんな事を口走る真司だが彼はまだ高三の十代である。 今は学校の夏期講習が終わり、一人暮らしをしているアパートに帰っている途中だった。 「大学かぁ・・・。どうすっかなあ。」 小さくなっていく子供の後ろ姿を見ながら、真司は眉間を歪ませた。 彼は高校の三年間、陸上部で汗を流していた。高校二年の夏に県の大会の百メートル走で優勝し、全国でベスト16にまで歩を進めた実力もあった。 が、今年の夏は全国どころか県予選で敗退。不完全燃焼で夏を終えた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加