魔女の存在

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 さすがの王子も緊張せずにはいられなかった。相手は何をしてくるのか分からない。少しの油断が、撤退を余儀なくされる。景気づけをかね、彼らは酒と一緒に薬を服用した。これは、この国に橙、伝わる秘薬なのだ。気分を高め戦場でも恐れず戦えるようになる。  この国は、この薬のお陰で繁栄したといっても過言ではない。だから、彼らは薬を飲むことに抵抗感がなかった。戦いに赴く前には、薬を飲む。これが、彼らにとっての当たり前なのだから。  王子達、討伐隊は古城へと突入すると、高らかに名乗り上げた。 「私はこの国の王子だ!長年、国を悩ませ続けてきた魔女よ!今日こそ、退治してくれようぞ!」 「おやおや。今日は王子様のご登場ね」  艶めかしい声と共に階段を降りてくる女性がいた。声と同じように艶めかしい身体をした、その女性はゆっくりとした動きで段を一段、一段と降りる。 「お前が、魔女か?」 「そうよ。ここの魔女。それで、あなたも私を退治しにきたという訳ね」 「そうだ!私には、どんな魔法も言葉も通用しない!観念するんだ」 「力(りき)まないでおくれよ。私だって、好きでここに留まっている訳ではないのだから」 「どういう意味だ?」 「言葉通りさ。一兵卒の兵士に訳を話しても、半信半疑のまま結論を出せないまま帰っていくし」 「?」 「そもそも、私がここに留まっているのは、あなたの先祖であるずっと昔の国王の命令さ」 「国王の命令だと?そんな馬鹿な話があるか。何故、昔の国王が悪しき魔女を留めておく必要がある」 「それがいいからさ。適当に私をここに留めさせておくことで、国民に不安を与える。そんな中で、国王が何かしたの成果を上げれば、その成果で国民は喜び、国を讃える。何かしらの問題が起こったとしても、魔女である私のせいにしてしまえいい」 「そんな馬鹿な理由で、魔女を・・・」 「それが、政治ってやつさ。適当な国民の為の行動と平穏の中にある危険。それが、この国を長年、支え続けてきた理由さ。それに、あなたがここに入る前に服用した薬だって、私が創ったもさ。この国で、その薬の製造方法を知っている人はないだろう?」
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