魔女の存在

4/4
前へ
/4ページ
次へ
「なんということだ」  王子は魔女の言葉に愕然として項垂れた。そして、 「あなたは、元々、私の先祖の命令で、ここに留まり続けていたというのですね」 「そうなるわね。最近では、国王自身が命令があったことをすっかり、忘れてしまっているけど」 「だったら、直系である私にも発言権はあるはずだ!この国は、魔女なんかいなくてもやっていける!この国の王子として命令します!直ちに、この国から立ち去りなさい!」 「・・・本当にいいの?」 「構わない!この国は、私達の手で支えていく」 「そういうのなら、構わないさ。余所の地に行かせてもらうよ」  魔女はそう言うと、一瞬の内に消え去った。まるで、初めからそこに魔女などいなかったかのように。  王子は王に魔女を退治したことだけを伝えた。この国の成り立ちなど、王に知らせる必要はない。魔女が必要だと判断しても、魔女はすでにこの地を去った後だ。無駄に不安を与えるだけだ。  その日、王国は国をあげてのお祭り騒ぎとなった。魔女という脅威が消え、人々は真の平穏を手に入れることができた。誰もが喜び合い、歓声に国が沸いた。  それから、幾日か経過した頃、国に今までにない変化が起こった。平穏が幾日も続くと、国民の間に王に対する不満の声が上がり始めたのだ。魔女の存在により不安で気にする間もなかった、国の税金の高さ。また、作物の不作も王に対する不満の要因となった。これまでなら、不作は魔女によるものとしてきたが、今は、その魔女はいない。誰にも責任をなすりつけることはできないのだ。  王子の方にも、変化は起きた。あれだけ、近隣諸国に名を馳せた王子が急に弱くなったのだ。魔女が創った薬が無くなり、代わりの様々な薬を飲んでみたが効果が現れることはなかった。むしろ、薬を乱用しすぎたことによる、体調不良を引き起こしてしまった。  魔女が言っていたように、国は瞬く間に瓦解していき、その隙をついた攻め入った他国によって完全に滅ぼされた。噂によると、他国の兵士達は怪しげな薬を飲んでいたというが、それと魔女の関連については不明のままである。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加