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──冬
しんしんと降り注ぐ雪の結晶をその身に浴びながら、表面が撥水加工されたスノーシューズで幾重にも重なった雪の層を踏み抜き、歩く。
脛の中程まで積もった雪が制服を少しずつ湿らせ、その下に隠された皮膚の熱を少しずつ奪っていく。家から歩き続けて早10分。厚手の靴下を履いているにも関わらず、足先の感覚が無くなりつつあった。
防寒着である黒のロングコートの肩口は粉雪の白に染まり、背後から吹き付ける雪混じりの風が、体の熱を下げていく。
頭に降り積もった雪を手で振り払うと、なんと髪が凍りついていた。
「マジか! 髪の毛凍っていやがる。あ~寒い…カイロ持ってくればよかったよ…」
寒い寒いと愚痴りながらも白銀の絨毯を進み続け、目的地である俺の高校である風翔高等学校の校門を潜り抜ける。
足早に昇降口を抜けて2階へと繋がる階段を駆け上り、2ーBと書かれた教室へとなだれ込む。
「暖房暖房!…あ~ったけ~」
教室に備え付けられた暖房設備へ一目散に飛びつき、冷えきった手足に温もりが蘇る。その代わり、ちょっとした痛みが伴ったが。
それから10分後、手足の解凍が終わって自分の席へと座る。窓側かれ5番目の席が俺の席だ。暖房の近さから眠くなるのは当たり前で、暖房の魔力に何度打ち負かされたことか……
鞄から教科書や筆記用具類をしまい込むと読書を始める。今俺が読んでいるのはライトノベルのファンタジー小説で、題名は『ドラゴニックワールド』。
内容は、魔法科学が進んだ世界“グライン”で産まれたドラゴンが、荒れた世界を救う物語。作中に出てくるドラゴンと魔導兵器“ガイスト・マシーン”、略して“G・M”のデザインが物凄く俺好み。
古本屋で見つけた時は何となくで買ってみたやつだったけど、がっちりと俺の心は掴まれた。
ネットで探してみたら第2巻が近々出版されるそうで、とても楽しみで仕方ない。
キーンコーンカーンコーン
「席つけー、点呼するぞー」
「…もうそんな時間か」
チャイムが鳴り終わったと同時に、教室に備え付けられたらドアから我らが担任の前田 一樹(まえだ かずき)先生が入ってきた。
今日の時限割は古文、数学、化学基礎、地学、体育×2だった。
栞を読み終わったページに挟み込み、先生からの連絡事項を聞き取っていく。
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