81~90話

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89.あまりもの とあるところに、自分の事を 『あまりもの』だと言う少女が居ました。 その少女は、 周りよりもワンテンポ遅れているような 少し、浮世離れした子です。 ボーっとしたところがあるから、受け取る物はいつも余り物。 移動するのに1人残る自分も、余り者。 そんな風に、自分で思っていたそうです。 だけど少女の友達は、 みんな彼女が大好きでした。 そんな少女と周りとの共通点。 それは、オカルト好きだという事です。 ある心霊スポットに、 少女たちは数人で向かいました。 そこは街外れの廃墟で、 いくつかの部屋にある石を廃墟の庭に集めて持ち寄ると、霊感が目覚める。 そんな噂のある場所でした。 だから少女たちは、霊感を身に付けに向かったのです。 丁度、石の数は人数と同じ。 必然的に、1人1つを持つ事になりました 順調に見つかっていく石たち。 だけど最後の1つを探そうという時、 背後から足音が聞こえてきました。 1つではなく、複数の、固い靴の、足音が。 その足音が近づいて来るに従って、 声も聞こえてくるようになりました。 その声は恨みつらみを、ひたすらに並べ立てています。 「もうさ、帰ろう?」 誰かが言いました。 それに賛同して、全員が頷きました。 運よく、足音は玄関とは逆の方。 みんな、玄関へ急ぎます。 そして庭まで出た所で、再び誰かが言いました。 「……ねえ、ここの噂って、 確か途中で辞めるには、石を全部、 置いてこなくちゃいけなかったよね……」 思い出した彼女たちの手には、 石が固く、握りこまれていました。
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