菊子さんの話

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 子供の頃から怖い話、不思議な話が大好きだった。好きが高じて大人になった現在も不思議な話を集めたサイトを運営している。  都市伝説では無いので、友達の体験談やら聞いた話は除外。本人が体験した実体験を集めている。  twitter等を利用して体験談を募集していた。そのtwitterで私宛のダイレクトメールを送ってきたのが菊子さんだった。  サイトのアドレスを書いて返信を送った所、間もなく投稿が有った。  送られてきた体験談を読んだ感想は、「載せられない」だった。余りにも内容が独りよがりのような気がした。ただの偶然のような気がした。それでも若干の引っ掛かりを感じながらクズクズしている内に、所用で菊子さんの住んでいる近くに行くことになった。  普段はわざわざ投稿者に会いに行くことはない。聞きたい事はメールか電話で済ませている。何故この時会って話を聞く気になったのか自分でも説明がつかない。強いて言えば、いい歳をしたおばさんの体験した事であると言う事だけ。  指定されたチェーン店のコーヒー店に着いて間もなく声を掛けられた(私はサイトに顔写真を載せている)。体験の時期や幾つの時の体験かをはっきりさせる為にサイトの投稿フォームには生年月日を記入して貰っている。  四十代後半のハズの菊子さんは、年齢より若く見えた。いや、若いというか年齢不詳。つかみどころのない印象だった。  話の緒が掴めないのか  「タバコ吸ってイイですか?」  挨拶の後の第一声はそれだった。灰皿に吸殻が入っている事から私が喫煙者である事は解っていたとおもうのだが、あえて聞くのがその年代の人の礼儀なのかも知れない。 「自由に話して良いですよ」  注文したコーヒーが来たので本題に入ろうとした。 「こっちに引っ越してから家族以外の人と話する事が無いので上手く話せるか解らないんですが…」  そう言いながら、深く煙を吸い込み目を閉じた。目を開いた時の印象が変わった。と思った。  そして、話始める。
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