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私が別れたと言う噂はすぐに広まった。
勿論、みっちゃんのせいだ。
別に気にしてはいないけど。
むしろ、また始まったと思った。
「別れたんだって?」
まただ…
見知らぬ男が私に話しかけてきた。
聞いてくることは、どいつも同じ。
別れたの?
もしよかったら…とか
今度はうまくいくかもよ?とか
くだらない台詞を吐いてくる。
すべてはみっちゃんのため。
私のためと思った?んな分けないじゃん。
この前別れた可愛い男子もそう。
みっちゃんは昔からそう
皆から自分だけを見てほしい。
ありきたりな、王道主人公みたい。
私の回りには嘘ばっかり…
「はぁ、花が恋しい」
目の前の男がキョトンとこっちを可愛い素振りで見てくる。
私はそんなこと気にせず地面にひっそり咲く花を見つめていた。
ふと、思い出が私の頭をよぎる。
あの野山には、もう随分と行ってない。
山火事があって全焼しちゃったから
私が知っている風景も咲いていた花も全て。
といっても、花になら毎日会ってる。
例えばこの花や道端や庭や学校で…
でも、どれもあの野山のとは違う。
花たちに世界がない。
小さい世界にうずくまってもう咲く時期なのって?
退屈そうに、詰まらなそうに、自分の事ではないような素振りで…。
「ねぇ、百合ちゃん聞いてる?」
自分の意識から戻ってくると、機嫌が悪そうな顔で
私を睨んでいる男がいた。
「残念だけど…その話は聞かなかったことにするわ」
「え?なんでさ」
男が慌てて引き止めようと話を振る。
「もし、私と付き合いたいのであれば薔薇の花を999本持ってきなさい。」
「はぁ?」
男は呆れたようなそんな声を上げた。
「花言葉も知らないやつが私に近づこうなんていい度胸ね」
「ふん、別にお前のためじゃないさ!!
全ては____」
「「みっちゃんのため!!」」
男は目を丸くした。
「知ってるよ?知らないとでも思った?」
私はやってやったそんな顔をしてやった。
男は顔を赤くして私を睨む。
「大してかわいそうもないやつが告白されたことをありがたくな思えよ!!
みっちゃんさえいなければ
お前に話しかけるやつなんているか!!」
捨て台詞のように思っていたことを口に出すと
ずかずかと帰っていった。
「さすが、みっちゃん!!
あー、花が恋しい~」
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