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―――調整の状況はどうか。
―――問題なく進んでいます。これなら今日中には調整が完了するでしょう。
―――そうか。しかし長かった。だが始めてから32年、ようやくたどり着いた。一つの答えに。あぁ長かった。私の人生全てを賭けたものと言っても過言ではない。
―――人間を媒体とし人造的に能力者を作りだす。そしてそれは最強の能力者となる。
―――私が求め、追い続けてきた夢にようやくたどり着くことが出来たのだ。私の作り上げた理論では、これで完成のはずだ。ようやく、私の人生を終えられる。
―――最終調整完了。記憶の消去に入ります。
―――あぁ。その前に一度起動してもらえないか。これが、最後の頼みだ。
―――危険です。起動したら何が起こってしまうかわかりませんよ。
―――構わん。全ての責任は私が持つ。起動テストに入れ。
―――無茶苦茶な。暴走状態になったら誰も止められませんよ。それでもいいんですか。それに失敗のリスクが大きすぎます。いくらあなただからって、責任を取りきれるはずがない。
―――それを承知なのだ。いざとなればエマージェンシーで建物ごと廃棄する。技術があればまた作りだせるだろう。いいからやってくれ。
―――…。ならせめて最低限の知識をインプットします。それでいいですね?
―――あぁ、構わん。ありがとう。
―――それでしたら、何とかやれると思います。
―――(すまない。私は何もしてやることが出来なかったな。父親として恥ずべき人間だと思う。自分の夢を追ったがために我が子を研究材料にするとは。私を憎んでくれ。そうしなければ私は贖罪することは出来ぬ。済まなかった。だがこれで終わりだ。ようやく、お前は開放され私は罪にまみれた余生を歩む。それでいい。私は余生のすべてでお前に罪を償い続ける。それでいい、それで…。)
―――インプット完了、起動に入ります。
―――あぁ、やってくれ。
―――…。起動完了。覚醒します。
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