エレメント・キャプチャー

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
―――調整の状況はどうか。 ―――問題なく進んでいます。これなら今日中には調整が完了するでしょう。 ―――そうか。しかし長かった。だが始めてから32年、ようやくたどり着いた。一つの答えに。あぁ長かった。私の人生全てを賭けたものと言っても過言ではない。 ―――人間を媒体とし人造的に能力者を作りだす。そしてそれは最強の能力者となる。 ―――私が求め、追い続けてきた夢にようやくたどり着くことが出来たのだ。私の作り上げた理論では、これで完成のはずだ。ようやく、私の人生を終えられる。 ―――最終調整完了。記憶の消去に入ります。 ―――あぁ。その前に一度起動してもらえないか。これが、最後の頼みだ。 ―――危険です。起動したら何が起こってしまうかわかりませんよ。 ―――構わん。全ての責任は私が持つ。起動テストに入れ。 ―――無茶苦茶な。暴走状態になったら誰も止められませんよ。それでもいいんですか。それに失敗のリスクが大きすぎます。いくらあなただからって、責任を取りきれるはずがない。 ―――それを承知なのだ。いざとなればエマージェンシーで建物ごと廃棄する。技術があればまた作りだせるだろう。いいからやってくれ。 ―――…。ならせめて最低限の知識をインプットします。それでいいですね? ―――あぁ、構わん。ありがとう。 ―――それでしたら、何とかやれると思います。 ―――(すまない。私は何もしてやることが出来なかったな。父親として恥ずべき人間だと思う。自分の夢を追ったがために我が子を研究材料にするとは。私を憎んでくれ。そうしなければ私は贖罪することは出来ぬ。済まなかった。だがこれで終わりだ。ようやく、お前は開放され私は罪にまみれた余生を歩む。それでいい。私は余生のすべてでお前に罪を償い続ける。それでいい、それで…。) ―――インプット完了、起動に入ります。 ―――あぁ、やってくれ。 ―――…。起動完了。覚醒します。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!