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平良 政宗という男
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湿度を含んだ生温い風が、首筋を撫でるように吹き付けて来る。
俺はコンビニのビニール袋を手に、人気のない通路を足早に歩いていた。
大理石の舗装がされた廊下には塵ひとつなく、掃除が行き届いている。
左右の壁には一定の間隔で蘭の花を模した装飾性の高い照明が備え付けられており、落ち着いたオレンジ色の明かりをばら撒いていた。
ここは都心近くにある高級マンションの最上階だ。
俺はある任務を熟す為に、この場所を訪れている。
ビニール袋の中にはラクトアイスが二つ。
早く届けないと、溶けてしまう。
何しろ閑静な高級住宅地に建つこのマンションの周囲には、住宅以外は何もない。
一番近いコンビニエンスストアーが、片道徒歩で三十分もの距離にあるのだ。
俺は首筋を伝い下りて来た汗を乱暴に手の平で拭うと、目的の部屋の前に立った。
貴賓室かと見紛うような、重厚な木製の扉がそびえ立っている。
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