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六十帖以上はあろうかという、リビングルーム。
南側の角部屋にあるそこは、通常ならば都心部の夜景が大パノラマで一望出来るだろう。
通常ならば、だ。
今は積み上げられた雑誌や衣類で、その大半が隠されてしまっている。
かろうじて隙間から覗く僅かな夜景も、手前にある窓ガラスが埃と何だか分からない汁で汚れているせいで、黒ずんて見えた。
「いっくん、お久しぶりィイ~!」
窓同様に埋もれたゴミで僅かなスペースしかないリビングの中央から、脳天気な声が上がる。
部屋の惨状に目を奪われて気づかなかったが、ソファーにはこの部屋の主が先程からこちらに向けて手を振っていた。
ロココ調と言うのだろうか。
白を基調に淡いピンクやブルーのアクセントが付けられた、猫脚のローソファー。
その上にやたらとフリルのついたエプロンドレスを身に纏った、金髪の女が寝そべっていた。
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