平良 政宗という男

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 あぁ、よく見るとピザの他にもソファーの下に、バナナの皮が落ちている。  しかも一体いつの物なのか、その皮は黒く変色して透明な液体が染み出していた。  俺の全身に一気に鳥肌が立って行く。  汚い。不潔。  信ジラレナイ。  極度の潔癖症である俺の堪忍袋その一の緒が、ぶちりと音をたてて弾け飛んだ。 「これはどういう事かと聞いてるんだ、政宗!」  びきびきと顳みに立って行く血管の悲鳴を聞きながら、俺は怒声を張り上げる。  すると政宗は人差し指をこちらに突き付けて、それをチッチと左右に動かした。 「政宗じゃなくて、今の私はシャルロットなの!」  上目遣いに俺を睨むと、メッと念を押すように訂正を入れる。  何がシャルロットだ、エリザベスみたいな恰好しやがって。  名前からも分かるように、政宗は生粋の日本人だ。  当然、派手な金髪もウィッグである。  では何故彼が黒髪を隠し、パンの代わりにお菓子を勧めて来そうな恰好をしているのかと言うと――。 「この変態が……!」  ただの趣味だった。
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