平良 政宗という男

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 一体いつから女装を好むようになったのか。  付き合いの長い俺にも、はるか昔の事過ぎてよく分からない。  気がつけば傍らにはいつも、女のような男友達の姿があったのだ。 「変態はないでしょ、いっくん! アートだよ? これは芸術なの!」  忌ま忌ましげに独語した俺を、政宗は唇を尖らせて反駁する。 「やっぱり実際に着てみないと、肌触りや機能性までは分からないでしょ?」  そう言って徐に立ち上がると、両手を広げて自分の姿を示してみせた。  途端に政宗の小さな顔が、俺の頭上に移動する。  こんな成りだが彼は俺より、十センチ以上も高い百八十五という長身だった。 「今夏はロリータ系のサマードレスで行こうかと思ってさ!」  目の前でくるくると回ってみせる長身の男を、俺は複雑な思いで眺め遣る。
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