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蔵書を纏めて紐で括り、入り口付近に置くと、更に奥の方へと足を運ぶ。
すると、妙なモノを発見した。
「ん? なんだこれ」
それは突起物のようにオレの腰の位置まで伸びていた。風呂敷を被せられているそれに疑問と、微かな既視感を覚え、風呂敷を捲る。暗闇でよく見えないが、どうやら洞穴のように中が空洞となっている。
除きこもうとすると、
「キャアアアアアアアアッ!!」
ユイの悲鳴が蔵の中を走る。弾かれたように後ろへ振り返ると、ユイが涙眼で手近な物を手当たり次第投げていた。
あぁ、『せせらぎ』か。心配して損した。
意識を再び岩のような突起物に向けると、悲鳴が再び迸る。
「こっち来ないでぇぇええええええええっ!!」
悲痛な叫びと共に、慌ただしい足音がこちらへ近付くのを感じると同時に、背中へ衝撃を受けた。
大方、『せせらぎ』が足元へ近付いてきたからオレの方へ避難したという次第だろう。
しかしな、妹よ。
ちょっとタイミング考えて欲しかったな。
ユイに巻き込まれ、オレは雪崩れ込むように洞穴へ転がるーーだけでは済まなかった。
突如訪れる浮遊感に血の気が引く。
まさかと思い視線を後方へ遣ると、薄暗い光を伴っている蔵の景色が急速に遠ざかっているではないか。
もしかしなくとも、オレ達は落下している。
「ユイ!」
咄嗟に呼び抱きすくめる。ユイも状況を理解したようで、離れないようにオレの背中へ腕を回す。
どこまでも無限に広がっているように思える暗闇の中を落ちる。すると、ぽつりぽつりと、程度に差異はあれど、光を灯す穴が複数見えてきた。
どれかに近付けないものかともがくが、一向に距離は縮まらない。
「兄さん、下!」
ユイの言葉に反応して首を捻る。その先には、オレ達を喰らおうとするかのように大口を開けて光が輝いていた。
抱き締める腕に一層力を込め、オレ達は重力に従いながら、光の中へ飲み込まれていった。
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