光る穴に落ちると森林であった。

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用意の足りない素人を見下すような眼を向けてくる妹に反論する。 「ってか、スマホがなかったらなんなのさ」 ユイの言葉に歯軋りする。 なんなの、だと? そんなの決まっているだろ。 「スマホがなかったら、オレはどうやってプロデュースすればいいんだよ!!」 「知らないよ」 「オレがやらなくて、誰があの娘をシンデレラにすると言うんだ!?」 「他のプロデューサーがやってくれるよ」 「待てよ、ここがもし本当に異世界だとしたら、動くアーニャの活躍を見届けられないじゃあないか!!」 「どうでもいいよ」 「くそ、他人事だと思いやがってラブライバーが……」 「ま、ワタシはそんなこと気にせずプレイしますがね」 生意気に言うと、ユイは徐に懐から携帯を取り出す。ホーム画面を開くと、あることに気付いた彼女は絶叫した。 「ネットに繋がんない!!」 そりゃそうだ。 「しかも圏外!!」 そりゃそうだ。 そもそも、森の中なんだからスマホが使える訳もないんだ。だから、手元にスマホがあっても、オレはどのみち出社できなかったんだ。 入社して二年、今日まで皆勤だったというのに、オレのプロデューサーとしての経歴に傷が付いてしまった。 ……いや、待てよ? 「妹よ」 「何さ。今ワタシ絶望にくれてるんだけど」 「異世界ものの中には、あちらとこちらの時間の流れが異なるという設定のものがあるだろ?」 「だから?」 「つまり、戻ったら実は一時間しか経ってないって事が考えられるんだ!!」 「逆に浦島パターンで百年後ってこともありうるけどね」 「それじゃあ346どころか765まで倒産してるかもしれないじゃあないか!!」 仮に生き残ってたとしても、オレがプロデュースするあいつらの中の人は確実にお空の上じゃあないか!! 「これは……一刻も早くあっちの世界に帰らなくては……」 「でも、ワタシ達って落ちてきたんだから、空でも飛ばないと無理じゃない」 「そうなんだよなぁ……」 深刻な状況に頭を悩ます。何もわからない今、こうしている内に世界情勢が激変しているかもしれない。 第三次世界対戦が始まってるかもしれないし、こち亀が終わってるかもしれない。スーパーヒーロータイムが消えてるかもしれないし、日本が沈んでるかもしれない。 本当、どうしたものか……。
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