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何か……元気ない? 始めは慣れない実習に緊張してるだけだと思った。 でも時折見せる憂いた表情は何かこう、もっと別の……。 って気になってまた彼女を見る。 そんなことを何度か繰り返してるうちにようやく気が付いた。 そー言えば、指輪がない。 勿論青春真っ只中の連中がたむろする高校なんかに実習に来てるんだから家に置いてきてるだけかもしれない。 でも、もしかして……。 そんな一男子高校生である俺の希望的観測は、さっき見た先生の泣き顔で、はっきりと断定された。 窓枠に掛けた左手の、指輪のないその指を確かめるように撫でる。 外を見つめるその瞳は悲しみに満ちていて、どう見ても感慨に浸ってるって感じじゃなかったから── 所詮、学校で教えてくれるのは受験勉強だけ。 なぁセンセ? こーゆー時、俺はどーするべきなんだろーな。 「センセ」
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