止まった時間

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「良かったら彼氏さんもどうですかー?きっと似合いますよー」 「いや、金属アレルギーなんで」 はい、嘘です。 「そうですか、残念です。数珠とかもありますけどそちらはいかがですか?」 「すいません、球体恐怖症なんで」 嘘です。 ていうか嘘ってバレるか。 「そうなんですかー、色々と大変ですね」 疑わないんかい!! 凄いよこの店員、一応ボケたつもりなのに涼しい顔してさらっと返したよ。 鉄の精神力持ってるよこの店員さん。 「それじゃ彼女さんの方は?何か買われて行きます?」 「えっと、そしたらこのネックレスを」 「はい、ありがとうございます!」 歩き始めて数分。 ネックレスを買った紫は袋に折り目がつかないよう両手でしっかりと持っていた。 大切な人にあげる物なんかね。 「買ったんなら着ければ良いのに」 遠回しにそう聞いてみる。 「弟にあげるやつだ。自分のじゃない」 「へー、弟が居たんだな」 「あぁ、あたしと違って真面目だよ。ひねくれてもいない、親の言い付けを守って勉強もスポーツも頑張ってる」 「その弟にプレゼントか。優しい姉ちゃんだな」 「そんなんじゃねえよ」
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