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ある晴れた日
穏やかに風が吹いていたある日
小さな白い雲は仲良しのくじらの形をした くじら雲さんと遊んでいました。
くじら雲さんの背中を滑り台にして滑ったり
頭からシューッと吹き上げられる水蒸気に乗せてもらったりしていました。
あんまりふたりが楽しそうに遊んでいるので、
それを見かけた空君がふたりに話しかけました。
『くじら雲さん達、楽しそうだね、何しているの?』
『わたしを滑り台にして小さな白い雲が遊んでいるんだよ。これがお気に入りなんだ』
くじら雲さんが答えました。
『ふう~ん』と空君はちょっとうらやましそうでした。
雲は『空君も一緒にあそびませんか?』と空君を誘ってみました。
『僕はやめておくよ』と空君はさびしそうに言いました。
空君はくじら雲さんの滑り台を滑る事が出来なかったんだと、
雲は気付きました。
その時、気持ちの良い風が吹いたと思ったら、白鳥の形をした はくちょう雲さんが現れました。
はくちょう雲さんはとても美しい雲です。
真っ白い翼を広げ、羽ばたくように風に乗り、大空を流れる姿は誰もが憧れています。
空君が最初に はくちょう雲さんに気付きました。
『やあ、はくちょう雲さん』といつもより嬉しそうな弾んだ声で はくちょう雲さんに挨拶してました。
もう雲やくじら雲さんの事は目に入っていない様でした。
はくちょう雲さんは空君にニッコリと微笑み、また気持ちの良い風に乗って羽ばたくように流れて行きました。
雲はくじら雲さんとまた遊び始めました。
さっきまであんなに楽しかったのに…今はあんまり楽しくありません。
雲の心の奥がチクっと痛くなり、それがずっと小さな痛みになってありました。
だけど、さっきよりもずっと楽しそうに はしゃいでいました。
すると、雲の様子に気が付いた仲良しのくじら雲さんが心配して言いました。
『どうしたんだい?様子がおかしいぞ、大丈夫かい?』
それから、
ひとりになった時、
小さな白い雲の涙がポタポタと落ちました。
雲の涙はずっと下の地上に向かってキラキラと小さく光り真っ直ぐに落ちて行きました。
けれど、涙は雨粒にはなりませんでした。
地上に落ちるずっと前に水蒸気になってスッと消えてしまいました。
誰にも気付かれないまま…。
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