第一章

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眩しくて 目を細める。 その光の中へと 足を一歩踏み出した。 その瞬間 何と無く 分かってきた気がする。 記憶が無いなら 新たに植え付ければいい。 この世界が 分からないなら 知ればいいのだ。 そうすれば 必ず 自分が 求める答えが 見付けられると思えた。 ふと ノアに 視線を投げると 彼が 目を見開いていた。 何を 驚いているのだろう。 『何?』 と 尋ねると ノアは 別に…と 視線を逸らした。 そして ギュッと 拳を握り締めている。 何か 気に障るような事を してしまったのだろうか? 『ノア?どうしたの?』 彼の顔を覗き込むと 彼は わざと顔を隠すように 反対の方へ 顔を背けた。 『…今…笑ってた。』 えっ? 笑ってた?僕が…? 『笑ってないよ。』 『ううん…笑ってたよ。今 君は 何を考えていたの?』 か細くて 消え入りそうな声だった。 『何をって…今 僕が 考えていたのは 記憶を無くしていても 新たに植え付ければ大丈夫…とか 分からないなら知ればいいとか…そうすれば 答えが見付かるかな?とか…。』 カルマが 正直に答えると ノアの肩が 震え出した。 何かに 怯えるようだ。 『それと もうひとつ…ノア、君の事も もっと知りたいよ。』 カルマの言葉に ピクッと 反応したノアは ゆっくりと こちらに振り返った。 『僕の事…知りたい?』 聞き返されて カルマは うん…と頷いた。 『は、初めてだね。君が僕の事をそんな風に言ってくれるなんて…。』 それに…と ノアは 少し照れたように 続けた。
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