第一章

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『ガラクタは 何か分かった?』 ノアの問い掛けに カルマは コクリと頷いた。 ガラクタは パズルのピースだ。 カルマは 解答を見ながら 静かに呟いた。 『…ゆりかご。』 子供をゆりかごに乗せた彼女は そのまま 崖から 突き落とした。 きっと 落ちていく ゆりかごを見ながら― 落ちていく 我が子を見ながら 彼女は 初めて 幸せそうに笑ったのだろう― これで、やっと悲劇は終わったのだ―と。 『さすがだね…カルマ。なら 探しに行こうよ。』 複雑な心境のまま カルマは 頷いた。 ノアの後を 着いていく。 白い空間、浮かぶガラクタに 目を向けながら カルマは 別の事を考えていた。 先程 ノアが 間違えた箇所を あのまま 解いていたら どんな答えが出ていたのだろう? カルマは 頭の中だけで 計算していく。 終わりの方だったから 大して時間は かからない。 彼女が 解放される所から変わるだけだ。 すぐに 答えが 弾き出された。 カルマは じっと 前を歩くノアの背中を見詰めた。 ノアが 出そうとしていた答えは 全く違った。 彼女は 解放されてから 豹変してしまう。 復讐を遂げる為に 彼女は 多くの人々を殺していく。 復讐を果たした後も 彼女の殺戮は 終わらない。 狂ってしまった彼女には 既に 感情も理性も無い。 やがて…彼女以外に 誰も居ない世界となる。 殺す相手が居ない事は 彼女にとって 悲劇に値する。 そうして 彼女は 自分の姿を鏡に写して 自らの胸を貫いた。 死に逝く 自分の姿を 鏡に写しながら 彼女は 涙を 一粒だけ流して 絶命した― 何故 こうなってしまったのか 分からないまま 彼女は 死に至る。
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