第一章

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再び パズルの前に 戻って来た。 『カルマ…その ゆりかごを投げれば良いんだよ…。』 僕は ノアに言われた通りに ゆりかごを投げた。 ゆりかごは ゆっくりと落ちていく。 落ちていく瞬間に 形が 変化を始めて 巨大なパズルのピースの形となり 綺麗に 嵌まった。 その 光景を見ていて 自分の中で 何かが 目覚めていく。 ガラガラに崩れたモノが 巻き戻すように 再生されていく。 記憶が 構築される。 古い記憶が 呼び覚まされていく。 ノアとの出会いまでもが 綺麗に くっきりと 思い出された。 あの時 ノアに手を差し出したのは 自分だった。 ノアは いかにも こちらから 手を掴んだと思わせるような事を言っていたけれど 真実は 違う。 異世界の繋がる空間から 切り離されていく この世界に 彼は ひとり取り残されたまま ただ 歎き悲しんでいた。 僕は 宿命を司るモノ…。 だから 切り離されていく 世界に 手を差し出した。 ノアは 僕の姿を見付けた途端 悲痛な叫びをあげた。 その叫びは 全世界に響き渡るような悲しい声― 何よりも 悲しく 誰よりも痛い 傷の音だった。 だから 僕は 彼に手を差し出さずにはいられなかった。 『君が 望む未来があるなら 僕が 必ず叶えてあげるから…だから 手を掴むんだ!君に、その意志があるのなら!』 僕の言葉に ノアは 涙に濡れた瞳を見開いた。 『未来…?僕にも 未来は ある?君は…何者?』 小さな声で 彼は 僕に尋ねる。 そうしている間にも 切り離さていく世界は 遠退いていく。 『僕は 宿命だ!君を救う事が出来るんだ!』 だから!と 強く言葉を放ち 精一杯に ギリギリまで手を伸ばす。 『…宿命。僕の―』 ノアの手が 伸ばされた 掴もうとして指先が 触れる。 けれど 上手く掴めない。 彼は それでも 懸命に 指を絡ませてきて ようやく 手を繋げた。 けれど その瞬間に僕の身体が 空間から フワリと離されて まるで 切り離された世界に 彼に 引き寄せられるように 僕は 落ちていった。 そうして二人は、あの時計台の上に降り立つ―
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