第一章

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『どうする?次の問題やる?』 ノアの声に はっ!と 我に返る。 記憶が戻った事は 彼には 言わない。 言っては いけない。 『もう少し 後でやる。何か ちょっと 疲れたから。』 自分の答えに ノアは 僅かに不満そうな表情をした。 『…ふうん。別に良いけど…。』 それも その筈だ。 いつもなら ここは すぐに 次の問題に行くと 僕は答えているから。 この世界は あの狂ってしまった時計台のせいで 時間の流れが 歪んでいる。 そして 不定期に 時間を巻き戻してしまう。 それも 必ず あの時計台に初めて降り立った過去まで戻るのだ。 それは 何回か経験して 気付いた事だ。 実際 僕の記憶も巻き戻されてしまうから 本当に ここまで 把握するのに 膨大な時間が かかっている。 ノアは 元々 この世界に住まうモノだから 記憶が 巻き戻る事は 無い。 だから 毎回 同じ反応を見せる僕を 上手く洗脳していく。 自分の都合の良いように 僕の記憶を改竄していくのだ。 本当は ノアは どうしたいと考えているのだろう。 この世界を― ノア自身を― 僕の事も― 僕が 探している答えは 自分の答えなんかじゃないんだ。 ノア…君の答えなんだ―
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