第一章

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新しい生活は 夢のような貴族みたいな暮らしだった。 けれど シスターは 馴染めなかった。 早く 教会に戻りたい。 自分の身は 神と共にあるのだ。 一年後 待ち侘びていた教会が 完成した。 白く穢れのない聖なる雰囲気が 漂う。 礼拝堂の他に 子供達用の個室の部屋まで 沢山 あった。 再び 礼拝堂に戻り生まれ変わった教会に感謝の祈りを捧げた。 すると 背後に あの男が 現れた。 シスターが 感謝の意を伝えると 男は ニコリと笑って こう言った。 これからも 子供達の提供を お願いします。 と― 提供?それは どうゆう意味なのだろう。 シスターが 首を傾げると 男は また 微笑んだ。 貴女は まだ お気づきにならないのですね。 貴女は 我々の組織の一員なんですよ。 ここで 子供達を拾い集めて 我々に委託する。 我々は 子供達を ある機関の施設に引き渡しています。 シスターは、男の言葉に さっきから 震えが止まらない。 寒気が納まらない。 目の前の男が 悪魔の遣いにしか見えない。 ―貴女は ここで 一生 我々の為に 子供達を提供すれば 良いのです。拒否権は ありません。貴女は 神の身許に ありながら 我々の奴隷となったのですから― それから もうひとつだけ― 男は そう言って 嘲笑った。 我々にとっても 貴女にとっても 子供達は 宝箱なのですから― 彼等達の犠牲のお陰で 人類は 高みを目指せるのです。 ―宝箱ー 自分が手にした宝箱は夢や希望が 詰まっていたのでは 無かった。 子供達の悲鳴や歎きや恐怖しか 詰まっていない。 今の自分は 子供達の犠牲の上にある。 なんて事に! シスターは 崩れ泣いた。 男は また 来ます。 そう言って 不気味な靴音を残しながら 去っていった。 何を責めるべきなのか 何を恨むべきなのか? 神に祈りを捧げた筈が 何故 悪魔に届いてしまったのだろうー シスターは その後 教会を黒く塗り潰し 異教徒へと転身してしまう。 捨てられる子供だけでは無く さらってまで 男に引き渡した。 人身売買に手を染め尽くし シスターは やがて 自殺を図る。 宝箱のような箱の上に 被さったまま息絶えたー
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