第一章

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そう あの問題から ノアは 協力的になった。 宝箱の形をしたガラクタは 中々 見付からなかった。 僕も ノアも もう一度 計算ミスが無いか かなり 話し合ったけど 結局 答えに 間違いは 無かった。 宝箱の形が 僕達の 想像していた物と異なっていたからだ。 宝箱は 柩の事だった。 それも 小さな柩で 子供しか入れない位の大きさだ。 『酷い話だね。』 僕が 柩に 跪づき 手を合わせると ノアも 隣で 手を合わせた。 『子供達は 実験台になっていたんだ。解剖が 主だったんだよ。生きたままだったから 辛かっただろうね。』 ノアは まるで 見てきたように 語った。 『それに あの話は 表向きは 正解だけど 本当は あのシスターは 気付いていたんだよ。自分が 罪を犯していた事実に―。』 飢えの苦しみを知ってしまったシスターにとって 貧しさは 地獄のようなものだったのだろう。 神に祈りを捧げた所で 腹は膨れない。 神は ただ 見守るだけの存在だからだ。 けれど 悪魔は 違う。 それ相応の対価を払えば 願いは 叶えられる。 シスターは 神に祈りを捧げている裏で 悪魔を召喚していたのかもしれない。 『人々は どうして 悲劇を生むのだろうね?』 ノアの問い掛けに 僕は 何も 答えられなかった。 そんな過去を思い出していると 何だか パズルを一気に 仕上げたくなってきてしまった。 カルマは 埃を払いながら立ち上がった。 スタスタと 少し離れた場所で 膝を抱えているノアに近寄る。 彼は ただ宙を見ている。 『ノア?』 と 名を呼ぶと 我に返ったように こちらを向いた。 『な…なに?』 怯えたような瞳の色だ。 彼は 時折 こうゆう目をする。 怯えるような事など ここには 何も無いのに― 『続きをしようと思って。このパズル 一気に完成させたいんだよね。』 僕の言葉に えっ?と ノアは 目を見開いた。 『それは 無理なんじゃない?だって こんなにあるし まだまだ 時間 かかるし…。君も記憶が 戻って無いから…。』 ノアなら そう答えると思った。 けれど 今回は 今までとは 違う。 時間が 巻き戻される前に パズルを完成させる。 そうすれば ノアの答えも 知る事が 出来るから― 『僕なら 平気だよ。』 そう言って 僕は 笑ってみせた。
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