第一章

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そうか…多分 彼は 答えを知っているのだ。 だから 自分だけに 解かせようとしているのだろう。 『…ひとつ質問していい?』 僕は ノアに問い掛けた。 ノアは クスッと笑って いいよ…と 答えた。 『この数字が 表すモノを答えれば 良いんだよね?』 『君が そう思うのなら それで 良いと思うよ?』 ノアの答えは 意地が悪い。 ただ 自分は 確認したかっただけなのに…。 でも これ以上 何かを言うのも 悔しくて 僕は 宙に浮く 赤い数字を睨みつけた。 この数字が 表しているもの。 赤い色…これは 血の色で きっと 穢た記憶を表している。 数字は バラバラな羅列だ。 これは もしかしたら この世界を表している? 数字は 逆さまもあったり 斜めに浮かんでいたり 定義が 無い。 これは あの狂った時計台を表しているのでは 無いだろうか? 法則すら狂わせている。 答えは― カルマは 散らばる数字から ノアに視線を移した。 ノアは その視線の意図を察したように こちらを見て 笑った。 『答えは…君なんだね。ノア。』 カルマの言葉に ノアは 肩を竦めた。 『正解!と、言いたい所だけど…残念。「ノア」じゃないよ。』 そうだった。 彼には 本当の名前がある。 『君の本当の名前は、oblivion。「忘却」の意味を表す。』 カルマが 静かに告げた。 『そう…今度こそ 正解だよ。』 ノアは フッと笑みを作って 手の平を ゆっくりと 天に翳した。
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