第一章

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こういった場合は、どちらが正解なのだろう? 『君…だれ?』 安心するわけでも無く 僅かに警戒しながら 少年は、名を尋ねた。 『全く…君って人は、そそっかしいね。あれ程 この時計台には近付くなって言ってるのに…。』 見知らぬ少年は どうやら 怒っているらしい。 それに 口ぶりからして 自分の事を知っているようだ。 もう少し 警戒を緩めても 大丈夫だろうか? 『僕の名前を尋ねるの これで何回目なの?さすがの僕でも回数まで数えらんない位になるんだけど…。』 そんなに 自分は 何回も 見知らぬ少年に名を尋ねているのだろうか? どうして…? 今 初めて会ったと思ったけれど…。 この不可思議な世界も 今、目の前に居る少年も 僕は 知らない…。 なのに 何故 僕を知っている? 『何か…いやだ。』 少年は無意識に呟いた。 何が嫌かも分からないのに― 見知らぬ少年は 諦めたように 笑った。 『全く…君って人は 本当に…仕方ないな。とにかく この時計台から 離れよう。ねっ?』 手を差し延べられたけれど 掴んで良いのか悩む。 この手を掴めば 何かが 変わるかもしれない。 掴んでも 何も変わらないかも しれない。 希望と失望のどちらを選べば いいのだろうか? 自分は どちらを選ぶ? 分からない。 何もかもが 分からない。 『また 悩んでるんだね?正解を探しているんだろ?僕が 答えてあげるよ。だから この手を取るんだ。』 見知らぬ少年が ねっ?と 首を傾げて また 笑った。
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