第一章

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正解を教えてくれるなら この手を取るべきなのかもしれない。 だから 僕は 今度は、迷わずに見知らぬ少年の手を取った。 『そう…。それで良いんだ。君は 僕の手を取るのが正解なんだから。』 彼の言葉に ホッとした。 間違えていなかったからだ。 僕の手を取った途端に 見知らぬ少年は 時計台から 飛び下りた。 身体が 宙を浮く。 スーッと 僕達は 綺麗に落ちていく。 何処までも 何処までも 下へ下へと 落ちて行く。 カラフルなガラクタを追い越しながら 僕達は 地に足を着いた。 『随分と高い時計台だったんだね。』 僕が 見知らぬ少年に話し掛けると 彼は 呆れたように 肩を竦めた。 『全く その台詞も 飽きるほど聞かされてるんだけど?』 そんなに 何回も同じ事を言ったりする訳が無いし そもそも 覚えが無い。 『僕と君は 今、初めて会ったんだから そんなに同じ事を何度も言ったりするもんか。』 『はいはい…。毎回 君は 進歩してないって事の証明だよね。』 進歩が無いって 酷い言い草だ。 『とにかく お家に帰るよ。話は その時に また 一から説明するからさ。どうせ また 自分の名前さえ 忘れてしまってるんだろうね。』 見知らぬ少年が スタスタと早足で歩き出した。 僕は 慌てて追い掛ける。 本当だった。 彼が 言ったように 僕は 自分の名前すら分からなかった。 どうしてだろう? 僕は 一体 何者なんだ?
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