第一章

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彼が言っていた 「お家」に着いた。 屋根が赤くて 苺みたいな形をしている。 人形の家みたいで ポップな印象だった。 お菓子の家にも見える。 『どうぞ…と言っても ここは 僕達の家なんだけどね。』 彼に招かれて 僕は 家に上がった。 内装も カラフルで 何だか ワクワクしてくるみたいだ。 『座ったら?そこ 君の場所だから。』 そう促されたソファーは オレンジ色で フカフカしていた。 僕の場所…。 その表現に 何だか 擽(くすぐ)られたような気分になる。 彼は 隣の赤いソファーに腰掛けた。 肘を付き 足を組んでいる。 初めて見た時から 思っていたけれど 彼は 儚い雰囲気を纏っている。 危うい感じがして ミステリアスで 綺麗だ。 人を引き付けるような魅力がある。 『さて…。一から話すって言ったから まず 最初に 今 君が居る世界から説明するよ。』 彼が 話を始めた。 僕は ゆっくり頷いた。 『ここは 忘れ去られた世界…。世界と言うよりは 空間と言う方が正しいかもね。』 忘れ去られた世界― ここが? 不可思議で カラフルな世界なのに 忘れ去られているなんて 信じられない。 『元々は まともな世界だったんだけどね…。ある時から 少しずつ変わっていってしまったんだ。』 世界が 変わった― どうして変わってしまったのだろう? 少年は 問い質したいのを ぐっと堪えて 話を聞いた。 『少しずつ変わった世界には 住人が居なくなり 生物すら存在しなくなった。最初から居た僕だけが ここに残されたんだ。』 最初から ここに存在した彼は どんな人物なのだろう。
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