第一章

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忘れ去られた世界に 置き去りにされたなんて 哀れむしか無い。 『単刀直入に言えばね… ここは 「忘却の空間」なんだ。あの宙に浮いているガラクタは 全ての世界から 流れて来る 穢(けがれ)た記憶なんだよ。』 『穢た記憶?』 少年が 思わず聞き返す。 見知らぬ少年は フッと 消え入りそうな顔で微笑んだ。 とても 切ない表情をしている。 『そう…穢た記憶なんて 人々は 必要としない。どうにか忘れたくて 消してしまおうとするんだ。』 『穢た記憶は 消す事が 出来るの?』 何故 人々は 穢た記憶を消してしまうのだろうか? 記憶は 何より大切だ。 蓄積した記憶は 選択に必要なのだから…。 正解だって きっと 簡単に答えられる。 自分には 今 記憶が全く残っていない。 彼の話を聞いて思い出せれば良いのだけれど…。 答えを探すには 記憶は絶対に不可欠だ。 『穢た記憶が 消える事は 無いよ。確かに 人々の中からは 消えるけれど この「忘却の空間」に 蓄積されて行くだけなんだ。』 この空間に 蓄積されるだけ? それならば ここは 大変な事になってしまうのでは 無いだろうか? 少年が 無意識に腕を組んだ。 そんな様子を見ながら 見知らぬ少年が クスクスと 笑い出した。 『何が そんなに可笑しいの?』 少年が首を傾げると 見知らぬ少年は 笑いを堪えて答えた。 『いや…そりゃ可笑しいよ。だって さっきも言ったけど 君は 全然 進歩が無いから…。食いつく所が 毎回 同じなんだもん。呆れるを通り越してしまったよ?』 なんだよ…。 さっきから 進歩がないって…。 それじゃあ あまりにも 僕が馬鹿みたいじゃないか。
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