君がくれた色彩

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 目が覚めると、音を吸収する為の小さな穴の沢山開いた天井が見える。  起き上がり、辺りを見回す。保健室独特の香りが鼻につき、誰が運んでくれたんだろうと何となく考えていた。 「あら、里中君お目覚め?」  保健室に人がいるのを始めて見た気がした。いつ来ても無人状態の保健室は、ほぼ来ても意味がないと不評な程だった。  どうやら、目の前にいる白衣を着た優しそうなおばさんが、此処の主らしい。 「そう言えば皆は?」  外を見ると練習が行われていなかった。時計を見るとまだ普段なら運動場にトンボをかけている人間がいてもおかしくは無い時間だった。 「さぁ、私が来た時にはもう誰もいなかったし。もう皆帰ったんじゃないの?」  怪我人を置いて帰るなんて薄情な奴らだ、とも思ったが。自分が逆だったら早く帰っているのもいた仕方ないとも思った。 「マズイな、俺の所為かも」  怪我人なんて出た日には、練習がストップしてしまうのは明らかだ。  とりあえず、監督の所まで話を聞きに行こうと思い。出入り口の扉を開けた。 「お世話になりました」
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