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「あ、ああ、それな。じゃあ、なんて言えばよかったんだよ。全然ダメでしたーってか?」
「そうじゃなくて。興味持たれて調べれられたら、バレますよ。あの子達だって充分調べられるんですから。」
「大丈夫、大丈夫。俺達のデータは残ってないから。」
タカヤさんが余裕の表情でいう。
「え・・・。」
残ってないって、どういう。
「管理者データになってるから見れないよ。言わなかったっけ?タカヤさんに言われて危ないからそうしたんだけど。」
ぽかんとしている俺にセイジさんが説明してくれる。店員さんが持ってきた生ビールが6杯テーブルに並ぶ。乾杯もなくみな普通に飲み始める。
「朝礼でいってたぞ。マナトー、聞いてなかったなぁ。」
タカヤさんが俺を冷めた目で見る。
「あ、れ・・・すみません。」
あー、たぶん。ユズルのことで悶々としてた時だ。
「まあまあ。タカヤさんだって俺のいったこと半分くらいしか聞いてないんだから。」
とセイジさんは笑い飛ばす。
「えー、そんなこと・・・あるかもな。だいたいおまえの話は長いんだよ。」
まあ、確かに。セイジさんの話はうんちくが長いのは確かだ。
だからこそ、あの緻密な仕事ができるんだろうけれど。
「いやいやいや、じゃあ、簡単な説明で理解してくださいよ。タカヤさん。」
まあ、それも一理ある。タカヤさんには念を押すくらいのつもりで説明を付けておかないと、すぐに飛ばしてしまう。
酒が進むにつれて、お互いの文句の言い合いになって行く。まあ、そんなことが言い合えるのはいいことなんだろうな。それでも今のところ上手くやっていけている。
タカヤさんは上司としてはかなり扱いやすい人だし、なんでも言いやすい。意図しているのかいないのか。気に掛けていないようで、周りを気に掛けてくれてもいる。
もっと鈍感な人だと思っていたけれど、三人で仕事をするようになってからそういう部分があることに気がついた。もしかしたら昔はそうではなかったのかもしれない。タカヤさんだって歳をとって成長しているんだろう。
携帯が鳴る。ユズルだ。どうしようか迷うけれど、出ないのも不自然なのでその場で出た。
「ああ、まだ。職場の人と飲んでる。うん、わかった。」
一瞬タカヤさん達と飲んでると言いそうになったけれど、なんとか堪えた。危ない、危ない。
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