147人が本棚に入れています
本棚に追加
「なに?女?」
タカヤさんが酔っぱらった目で俺を見て言う。
あー、答えたくないな。
「いや、全然。」
俺はしれっと応える。
「うそつけー、女だろ。今のは、なあ?」
セイジさんに同意を求めている。
「うーん、確かに。ぽかったねえ。」
ったく、この酔っ払い二人。
「いいなあ。マナトは彼女がいるのかー。」
セイジさんがうらやましそうに俺を見る。
「どんな子?」
タカヤさんの方を見ない様にしている俺の顔をタカヤさんが覗き込んでくる。
「いいじゃないですか、どんなでも。」
「おおー、認めた。やっぱなあ。」
うれしそうにタカヤさんがいう。
「さいきん、楽しそうだと思ったら、やっぱりか。」
「そんなことないですよ。」
「馬鹿言え。前は死にそうな顔してたくせに、よく言うわ。慰めてやったのにぃ。」
・・・。なんて、嫌な人なんだ。
「ええ、タカヤさんが慰めたんですか?大丈夫だった?マナト。」
セイジさんが心配そうに俺を見る。
「いや、あんまり・・・。」
そういやセクハラされたっけ。
「慰めになってないみたいですよ、タカヤさん。」
「そんなことねえよ。俺はいつもだなー。」
あれこれ不毛なやり取りが続いた。
帰るとユズルは風呂に入っているようで姿はなかった。
俺はネクタイを外して、水を飲む。ちょっと飲み過ぎたかも。明日も仕事なのに、あの二人といるとついつい酒が進む。
酒の回った頭でテレビを付ける。今日のニュースが流れる。しばらくしてユズルが風呂から出て来た。
「ああ、おかえり。」
「ただいま。」
「タカヤとセイジさんと飲んでたの?」
「そう。」
「電話大丈夫だった?」
「大丈夫だけど、彼女だってつつかれた。」
「はは、そっか。で、なんていったの?」
「いや、適当に誤魔化しといたよ。そんなには追及もされなかったし。」
「ふうん。風呂入れよ。」
「うん、ちょっと飲み過ぎたから落ち着いてから入るわ。」
「わかった、俺もう寝るわ。」
「うん、おやすみ。」
ユズルの方が出社が早いので、だいたい早く寝る。
俺はできるだけ一緒に起きて朝食を準備するようにはしているけれど、明日は無理かもな。
最初のコメントを投稿しよう!