147人が本棚に入れています
本棚に追加
正直あいつと一緒に仕事をさせるのはあまり気が進まなかったけれど、俺が首を突っ込むところでもないので黙認した。
まあ、タカヤだってもう子供じゃない、興味本位でマナトに手を出したりはしないだろう・・・と思いたい。問題はマナトの方。
考えだしたらきりがない。
あんな歌詞貰っといて俺は何考えてんだ。
よりを戻した日、横断報道の向こうで俯いていたあいつの姿を思い出す。あんなになるまで、俺を想ってくれてるのに。
深夜1時過ぎだったと思う。マナトはベットに潜り込んできた。
マナトはマナトで自分のベットがあるけれど、俺の方はダブルを置いてある。 別々に寝る日もあるけれど。
マナトが後ろから俺を抱きしめてくる。
寝ぼけた頭でおかえりと言ったような気がする。
朝俺が目を覚ましても、マナトはまだぐっすりと眠っていた。大抵の日は一緒に起きて朝食を準備してくれたりするのだが、疲れているんだろう。
俺はマナトの頭をそっと撫でてベットを離れた。
ハンガーに掛けてあるマナトのスーツの傍を通ると、タバコ臭い。
このタバコの匂い、タカヤだ。高校の時から同じたばこ。一緒に仕事してんだから仕方ない。でも、たしか個室があるはず。
やめよう、考えても仕方ないことだ。自分の思考を無理やり打ち切る。
適当に朝食を済ませて、家を出る前にマナトを起こす。
「マナト、寝過ごすなよ。」
肩を揺する。
「んー」
マナトは眠そうな声を上げる。
「あ・・れ、ユズル、もう行くの?」
「ああ、おまえ寝過ごすなよ。」
「え、ああ、そんな時間?」
「俺、もう行くから。大丈夫か?」
「大丈夫、ごめん、起きれなくて。」
「いいよ。昨日も遅かったな。じゃ、行くわ。」
「いってらっしゃい。」
なんとなくマナトが起きれたか心配で、会社に着いてからメールをしてみたが返事はない。遅刻してもどうということはないだろうけれど。俺と違ってマナトの職場は3人だしな。
最初のコメントを投稿しよう!