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「おれが、なに?」
「ユズルが・・・色っぽいから」
「・・・何言ってんだ、ばか」
ユズルは呆れて笑う。
先にシャワーを浴びて、ユズルが出てくるまでに朝食を作る。
休日の朝。外は雨だ。
今日は二人とも特に予定もなく、ごろごろと部屋で過ごすことになるだろう。朝食を食べて、簡単に掃除をしてテレビを見る。テレビを見ながらユズルを抱き寄せて、また肌に指を這わせる。
ユズルは昼間からとかあれこれ文句を言いながらも、本気で抵抗はしない。
一緒に暮らしだして数カ月、ユズルが傍らにいることがまた当たり前になった。
付き合いだしてから、意外に男っぽい性格なのだと思っていたけれど、一緒に生活するようになってさらにそう感じている。
ユズルは寝起きもいいし、身の回りのことは自分でできる。けれど家事は大雑把、料理は簡単なものは作ってくれるが、好きではないようだし、きっちりてきぱきというタイプでもない。仕事ぶりや外向きではきちんとしたイメージだったので意外だ。
「なあ、マナト。」
「ん?」
「おまえ仕事はどうなの?」
「順調だけど。」
「タカヤに言った?」
「何を?」
「何をって、俺と住んでるって。」
「言ってない。あれ、言うなって言わなかったっけ?」
「言った。」
「どういう意味?」
「引っ越したのは言った?」
「言ったけど、職場に届けを出さないとダメだし。」
「そっか、言ってないなら問題ない。」
「あえて言う必要もないと思うけど、隠す必要もないと思うんだけど。」
「んー?まあ、そうだけどな。ほら、面倒だろ。俺もまた一緒にやろうとか言われたら。」
「前に断って、今他の仕事してんだからもう平気だと思うけど、そこまでしつこくないよ。」
「うん、でもなんか面倒なんだよ。」
「いいけどね。」
「うん、よろしく。」
ユズルはタカヤさんに会いたがらない。
気持ちは分からなくもないけれど・・・けれど・・・。
携帯が鳴る。ユズルの携帯だ。俺のそばにあったのでユズルに渡すために持ち上げる。なんとなく着信画面に目がいく。女の名前が出てる。
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