自覚

2/15
前へ
/65ページ
次へ
 コンビニで食べ物を買い込んでタカヤさんのアパートへ向かった。少し歩いたけれど、職場の徒歩圏内で、小綺麗な感じのマンションだった。    エレベータで3階へ上がる。  古くからの付き合いだけれど、プライベートなことはあまり知らない。高校生の時にはそういった部分に立ち入らないというルールが組織の中にあった訳だし自宅にくるなんて少し不思議な感じがする。 「どうぞ。」  ドアを開けてタカヤさんは躊躇なく部屋に入る。  少し身構えていた俺とは違ってタカヤさんに構えた様子は全くない。 「お邪魔します。」  誰かの家に来るのって久々だ。まえはユズルの家に行っていたけれど、今は一緒に住んでるし。 「ちょっと散らかってるけど、気にしないよな。」 「え、ああ、全然・・・」  っと、言ったものの部屋を見回すと、というか見回すまでもなくないくらいの荒れようだった。台所には洗い物が山盛り、そこらに洗濯物と思われる衣服が散乱している。  まあ、実際男の一人暮らしなんてこんなものかもしれない・・・。夜遅くまで仕事してるし、休日返上もめずらしくないし。  タカヤさんは散らかっているものを脇へ寄せて俺の座る場所を作ってくれる。 「さあ、飲み直そう。」  タカヤさんは台所の奥から酒瓶を出してきて俺の前のテーブルに置く。手に入れにくいと聞く焼酎だ。 「いいんですか、俺なんかにこんないい酒飲ませて。」 「日ごろの感謝ってことでいいことにしてやるよ。おまえもセイジもよくやってくれてる。」 「じゃあ、セイジさんも呼ばないと。」 「そーだな、じゃあ、次セイジが来た時のために少し残しておいてやろう。」  仕事の話ばかりして時間が過ぎて行く。タカヤさんはほんとに仕事人間だな、そんな事を考えていたら、酒の所為もあってくすっと笑ってしまった。 「なんだよ。」 「え、いや、なんでもないです。」 「今笑うとこだったか?」  確かに仕事の話をしていたので、笑える箇所は一つもなかった。 「いえ、えっと、タカヤさんって仕事人間だなと思って。」 「なんだよ、いきなり。」 タカヤさんは面食らったようだ。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加