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「○○ちゃんからメールですよ。」
俺は嫌味にならないように言って、携帯を差し出す。
「おー、○○ちゃんね。了解。」
ユズルも気にした様子もなく受け取る。
携帯を開いて、メールを読みながらうれしそうに笑っている。
なんなんだ。まったく、相変わらず女性におモテになる。
ユズルはメールを返す素振りをして、携帯を閉じる。するとまたすぐに携帯が鳴る。そしてまたメールを返す。そんなやり取りが数回。
さすがにむかつく。
俺は冷蔵庫を開けて中を確認する。ほっておいて買い物に行こう。ベットの中で半裸のままメールをしているユズルを尻目に着替えて身支度をする。
「マナト?どっかいくの?」
「買い物、行ってくる。」
「え、じゃあ俺も行くし。」
「じゃあ、さっさと着替えて貰えます?」
「なんだよ、行くなら行くっていえよ。てか、なんで敬語?」
ユズルさんはおかしそうに笑う。
あーむかつく。そういう無神経なところが腹立たしい。
ユズルは手早く着替えると玄関で待っていた俺の背中におぶさるように抱きついてきた。
「お待たせーマナトくん。あれは、同僚の女の子で今度、課でやる飲み会の件だから、機嫌直せよ。」
なんだ、気がついてたのか。
「別に、そんなんじゃ。」
「そう?ならいいけど。」
ユズルは後ろから俺の頬にちゅっと音を立ててキスをすると、巻きついていた腕をするっと解いてふふっと笑った。
結局ユズルはいつも余裕。
ユズルは俺のことで不安になったり、嫉妬したりしないのだろうか。
だいたい、戻ったのだってユズルの意味不明な“もう考えるのはいい”という一言だった。
そんなに考えていてくれていたのだろうか。離れていた間のことについては話したりはしない。
歩いて近くのスーパーへ向かう。
男二人だとそれなりにエンゲル係数も高くなる。おまけに二人ともけっこう飲めたりするので酒代も馬鹿にならない。生活費は二人で同じ額を出し合ってそこから使っている。足りなくなったらまた同じ額ずつ補充。
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