自覚

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「まあ、おまえがそう思えるようになったのなら少しは俺も安心できるよ。」 「俺もそれなりには成長したつもりなんですが。」 「ああ、いい働きっぷりだって聞いてるよ。」 「藤村さんからですか?」 「ああ。」 「そういう話しって流れてるんですか?」 「いや、俺は元担当だからな。おまえら組織はまだ極秘だ。」 「そうですか。そうですよね。」  仕事の話しをしながら和やかな時間が流れていくけれど、正直現状そんな間柄でもない筈で、なんなんだろうこの空気は。 迷いなく車は進みアパートの近くで車が止まる。俺がここに住んでるって知ってるってことか。なら、ユズルとのことも知っているのだろうか。 「ありがとうございました。」  会った時の緊張はとけて礼を述べる。 「いや、こちらこそ呼びだして悪かった。」 「それじゃあ、おやすみなさい。」  同僚と別れるのと同じように何事もなかったかのように挨拶をして別れる。本当はそうではないのに。    内心と対面に違和感を覚えながら平然として車のドアに手を掛ける。 「マナト。」    名前を呼ばれて、手を止める。  藤原さんがもう一度名前を呼ぶ。    ゆっくりと振り返る。  振り返ったと同時に肩を掴まれる。  驚いて身を引こうとしたけれど、藤原さんは俺の肩を引き寄せて強引に唇を合わせる。  ぬるっと舌が差し込まれて、いつかそうした記憶が脳裏に甦る。  頭の中で火花が散るって全身に電流が走るような感覚。  俺は抵抗できずにされるままになっていた。  藤原さんは濃厚に味わって、唇を離す。  間近に藤原さんの顔。  俺は言葉が出ない。  再び唇が重ねられる。  されるまま俺の頭の中は真っ白になっていく。  遠い日藤原さんと過ごした記憶が甦るばかりで頭が働かない。高校生の頃の自分に戻ったような錯覚に陥る。  藤原さんの笑顔。  仲間達。  ユズル。    はっとして、目を開ける。  だめだ。  俺は藤原さんを押し返す。 「マナト・・・。」 「すみません。」 急いで車を降りる。
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