自覚

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 うん、酒を飲んだ方がいいかもしれない。  一気に喉に流し込む。  もう一度ユズルの傍へ行って後ろから抱き締める。 「なんだよ。今日はどーした?」  風呂上がりの素肌に首にタオルを掛けただけのユズルはくすぐったそうに身体をよじる。  俺の顔をやさしく覗き込んでくる。 「ユズル。」 「だから、なに?」  ユズルの声はやさしい。  俺はユズルの肩に顔を埋める。石鹸のいい匂いがする。 「いい匂い。」 「風呂上がりだからな。」  そういいながら俺の頭を包みむように撫でてくれる。 「おまえも風呂入ってこいよ、さっぱりするぞ。」  俺が顔を上げるとユズルは微笑んでビールを仰ぐ。  離れ難いけれど、どうにも後ろめたくて体を離してシャワーに向かう。早く洗い流してしまおう。藤原さんの感触を。あの人が触れた場所を。  冷たいシャワーを頭から浴びる。  目を閉じると藤原さんのキスが甦る。昔と変わらない穏やかな声、仕草。俺を待っていたと告げた時の儚げな顔。再び胸が締め付けられる。  どうして、今になって・・・。  どうして、会いに来たりするんだ。  胸の奥が苦しい。    手放したくなかった人。  けれど、手放すと決めた人。  俺はどうしたら・・・。    風呂から出るとユズルはベットの中で携帯を弄っていた。 「今日はこっちで寝てもいい?」  ユズルに声を掛ける。 「いいよ。」  ユズルはキョトンとした顔で俺を見上げる。  ユズルの横に潜り込んでまだ携帯を弄っているユズルの身体に腕を回す。 「今日はどーしたんだよ。」  ユズルが呆れたように俺を見る。 「たまには甘えたいんだよ。」 「ふうん。」 「ふうんって・・・。」 「そんなかわいいところがあったんだなっと思って。」 「一応年下だからね。」  俺がそう言うとユズルの唇がそっと俺に重なる。 「マナトはいつもかわいいよ。」  そういって再び唇が重ねてくる。  ユズルは滑らかに俺の身体を開いていく。まるでいつもそうしているかのような慣れた仕草。ユズルからそうされるのは初めてだった。ユズルの愛撫が心地よくてつい吐息が漏れる。  ユズルの満足そうな視線が俺を見下ろす。  急に恥ずかしくなって視線を逸らす。  ユズルはそれを見てクスッと笑ったようだった。
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