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やさしい仕草に酔わされて、ユズルの名前を呼ぶ。
応えるようにユズルは身体を進める。
痛みよりも感情が勝る。
全部消してくれ。藤原さんのこと全部。
奥に触れられて声が鼻を抜ける。
「はっぁ・・・っ」
遠慮がちだったユズルの動きに力がこもる。
痛みが走るけれど、逃れようとは思わない。
傷ついてもいい。痛みで全て忘れてしまえばいい。
「マナト・・・?」
名前を呼ばれて目を開ける。
「・・・ごめん、痛かった?」
自分の目から涙が出ていることに気が付く。無意識にしゃくりあげている。痛みの所為なのか生理的なものなの自分でもよくわからない。
俺は首を振る。
そうじゃないよ。
「ごめん。」
ユズルはそう言って俺の髪を撫でる。
そうじゃない。
涙が溢れる。
「マナト。」
ユズルが俺を抱きしめる。
「・・・ユズル。」
「うん。」
「俺は・・・。」
ユズルが好きなんだ。そう言いたかったのに言葉が出ない。
「大丈夫だ。何も心配しなくていい。」
まるで全て俺の抱えてることを解っているかのようにユズルはそう言って俺をやさしく抱き締めた。
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