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マナトのほうはすっかり社会人らしくなってからのスタートで結局のところ主戦力はマナトに頼るところが大きかったがあいつは充分にそれをこなしてくれている。マナトの個室に目をやるが電気は点いていない。まだ戻ってないのか。
今日はまだ遅くなるとか直帰するとかの連絡は入ってなかったな。
自室に戻って来客用のソファーでひと息つく。
煙草に火を付けるとジュっと燃える音が妙に大きく聞こえた。ゆっくりと煙を吐き出す。
一応のところ順調。セイジもマナトもそつなく仕事をこなしてくれている。
けれど、今のところそう難しい案件はおろしていない。複雑なものに関しては俺が受けることにしているし、実際今のところそこまでのものは来ていない。
準備段階だからという藤村さんの配慮なのだろう。
問題はこれからだ。実際三人でやっていけるのだろうか。案件の内容がきつかろうが軽かろうが時間は取られる。中途半端なことはできない。俺とマナトは多少の余裕があるにしても、俺は所長業務、マナトは高校生のフォロー、これに本格的に難解な調査が入れば手いっぱい。
今のところ三人単独で動いているけれど一人じゃこなせない案件も出てくるだろう。
人手不足。
増員を考えなければならないけれど、どうせならもう少しセイジが落ち着いてから人を増やしたいし人選も難しい。機密が多いからやたらめったら人を入れ変えられない。
経験者を入れたいところだけれど、目ぼしい人間はいない。
警察関係でもいいけれど、型にはまってるのは扱いづらそうだし、警官気どりで動かれるのも困る。
高校のときのメンバーを思い浮かべてみるけれど俺より上はもうほとんど連絡をとっていないし、下も一応当たるつもりで調べはしたがマナト以外はみんな生活が固まってしまっている。
やっぱりだめもとでユズルに声を掛けておくべきだったかもしれない。全くその気がなかったのを知っていたから諦めて声も掛けなったけれど、こうなってくると少し後悔する。頑張れば口説き落とせたかもしれない。
ため息と一緒に煙草の煙を吐き出す。
しばらくは現状維持で様子を見るしかないか。
部屋の外の物音に気が付くと同時にドアがノックされた。その音に若干驚く。考え事をしていた所為か気が付かなかった。
返事を返すとドアが開きマナトが顔を出す。
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